1on1を行っていても、毎回同じような業務報告で終わり、部下の考えや悩みまで聞けないことがあります。
会話が続かないからと質問を増やしても、上司が答えを急がせたり、聞いた内容を支援につなげなかったりすれば、本音は出にくくなります。
大切なのは、目的に合った問いを一つずつ投げかけ、相手の言葉を評価せずに聞くことです。
この記事では、仕事の状況、負担や本音、成長やキャリアを確認するときに使える質問例を紹介します。
会話を行動へつなげる方法や、情報の扱い、誘導しない聞き方など、1on1を実施するうえでの注意点も解説します。
1on1の目的と質問する前の基本
1on1は進捗確認だけの時間ではない
1on1で業務の進み具合を確認することは必要です。
しかし、期限や成果の確認だけで終わるなら、通常の進捗会議や業務報告と大きく変わりません。
個別に対話する時間では、仕事を進めにくくしている原因、本人が感じている負担、今後伸ばしたい力、上司に求める支援なども扱います。
たとえば、仕事が遅れていることがわかった場合、「いつ終わりますか」と聞くだけでは原因が見えません。
「どの部分で進めにくさを感じていますか」と聞けば、情報不足、優先順位の混乱、経験不足、仕事量の多さなどを確認できます。
1on1の中心は部下ですが、仕事上の責任まで部下へ押しつける場ではありません。
上司が解決すべき問題や、チーム全体で見直すべき仕組みもあります。
会話の目的は、部下をうまく話させることではありません。
本人と上司が現在の状態を共有し、必要な行動や支援を見つけることです。
上司が話しすぎないようにする
1on1で沈黙が生まれると、上司は説明や助言で時間を埋めたくなります。
しかし、上司が長く話すほど、部下が考えを整理して言葉にする時間は減ります。
質問した後は、すぐに次の質問を重ねず、少し待ちましょう。
考える時間が必要な人もいます。
部下が話し始めたら、途中で結論を予測して遮らないことが大切です。
「つまり、こういうことですね」と早くまとめすぎると、本人が本当に伝えたいこととずれる場合があります。
聞きながら、「その部分をもう少し教えてください」「それはいつ頃から感じていますか」と具体化します。
上司の積極的な傾聴は、言葉を聞くだけでなく、内容を確かめ、相手が理解されたと感じられる反応を返す行動です。
上司の傾聴が高まることと、従業員が感じる仕事上の不安の変化との関係を調べた研究では、知覚された統制感が関わる可能性も示されました。
話す量を機械的に決める必要はありません。
ただし、上司が会話の大半を占めているなら、質問と沈黙の使い方を見直しましょう。
正解を求めず相手の考えを聞く
質問の形をしていても、上司が望む答えを当てさせる聞き方になっていることがあります。
「もっと早く相談すべきだったと思いませんか。」
「この方法が一番よいですよね。」
このような質問は、部下の考えを聞くというより、上司の結論へ誘導しています。
相手の考えを知りたいときは、答えの範囲を狭めすぎない質問を使いましょう。
「そのとき、どのように判断しましたか。」
「ほかにどのような方法を考えましたか。」
「今振り返ると、変えたい部分はありますか。」
部下の答えが上司の考えと違っても、すぐに否定しないことが大切です。
まず、どの情報をもとに判断したのかを確認します。
安全、法令、顧客への重大な影響がある場合は、上司が明確に指示する必要があります。
それ以外の場面では、本人の考えを聞いてから助言した方が、判断力を育てやすくなります。
評価面談と1on1の違いを整理する
評価面談では、一定期間の成果や行動を基準に照らして確認し、評価結果や今後の期待を伝えます。
一方の1on1では、現在の困りごと、仕事の進め方、本人の希望、必要な支援などを継続的に話します。
両者を完全に切り離すことはできません。
上司は評価者でもあるため、部下が評価への影響を気にするのは自然です。
そのため、「何を話しても評価と無関係です」と約束するのは適切ではありません。
代わりに、会話の目的と情報の扱いを具体的に説明しましょう。
「今日は評価を決める面談ではなく、仕事を進めやすくするための時間です。」
「業務上対応が必要な内容は関係者と共有する場合がありますが、その際は事前に確認します。」
このように伝えれば、部下は話す範囲を判断できます。
評価に関係する内容を扱う場合は、その場で明確に区別しましょう。
1on1で聞いた個人的な悩みを、本人への説明なしに評価材料として使うと、対話への信頼を損ないます。
安心して話せる雰囲気を整える
質問内容がよくても、話したことで不利益を受けると感じれば、本音は出てきません。
心理的安全性に関する職場チームの研究では、対人関係上の危険を恐れずに発言できるという共有認識が、学習行動と関係していました。
安心して話せる雰囲気は、優しい言葉だけでは作れません。
反対意見を聞いても感情的に否定しない。
悪い報告を受けても、まず事実を確認する。
話した内容を必要以上に周囲へ広めない。
上司自身への要望を聞いたら、実行できるかどうかを返答する。
こうした反応の積み重ねが必要です。
場所や時間にも配慮しましょう。
周囲に会話が聞こえる場所や、終了時刻が見えない長い面談では、話しにくくなります。
一回の1on1で深い話を引き出そうと焦る必要はありません。
短くても、約束した対応を実行し、次回に確認する方が信頼につながります。
仕事の状況を確認するときの質問例
今いちばん力を入れている仕事は何ですか
この質問は、本人が現在何を重要だと考えているかを確認するために使えます。
上司が考える優先課題と、部下が力を入れている仕事が一致しているとは限りません。
答えを聞いたら、「なぜその仕事を優先していますか」「どのような状態になれば完了ですか」と続けましょう。
優先順位の理由を聞くことで、指示の理解や判断基準を確認できます。
本人が複数の仕事を挙げた場合は、「その中で一つ選ぶならどれですか」と聞きます。
すべてが最優先の状態では、実際には優先順位が決まっていません。
上司の認識と違っていた場合は、すぐに「それは違う」と否定せず、どの情報が共有されていなかったのかを確認しましょう。
経営上の方針変更や顧客対応の緊急性を、部下が知らない可能性があります。
この質問は、本人の熱意を測るためではありません。
チームの優先順位と、本人の行動がそろっているかを確かめるために使います。
仕事を進めるうえで困っていることはありますか
「困っていることはありますか」と聞くと、「特にありません」と答えられることがあります。
困っていると認めることを、能力不足だと感じる人もいるからです。
答えにくそうな場合は、範囲を具体的にしましょう。
「情報、時間、人員、判断のどこで進めにくさがありますか。」
「自分だけでは決めにくい部分はありますか。」
「何が整えば、もう少し進めやすくなりますか。」
本人が問題を話したら、すぐに解決策を押しつけないようにします。
まず、「これまで何を試しましたか」「最も大きな障害はどれですか」と確認します。
上司が解決すべき問題なのか、本人が方法を変える問題なのか、他部署との調整が必要なのかを分けましょう。
相談されたことをすべて上司が引き取ると、部下が考える機会を失います。
反対に、すべて「自分で考えて」と返すと、必要な支援を受けられません。
本人の責任範囲と上司の支援範囲を一緒に決めることが大切です。
予定どおり進んでいない部分はありますか
仕事が遅れているかどうかを直接聞くと、責められているように感じる人がいます。
「予定どおり進んでいない部分はありますか」という聞き方なら、遅れだけでなく、想定外の変化も確認できます。
答えが出たら、現在地、当初の予定、遅れた理由、影響の範囲を整理しましょう。
「何日遅れていますか。」
「ほかの担当者への影響はありますか。」
「どの時点で計画と違うと気づきましたか。」
原因が本人の行動だけとは限りません。
仕事量の増加、依頼内容の変更、必要な情報の不足、上司の承認待ちなども考えられます。
遅れを報告したこと自体を強く責めると、次回から共有が遅くなります。
問題が起きた原因と、報告のタイミングを分けて扱いましょう。
最後に、変更後の期限と必要な支援を決めます。
「頑張って間に合わせます」で終わらせず、具体的な行動へつなげることが重要です。
優先順位に迷っている仕事はありますか
複数の仕事が重なると、本人だけでは優先順位を決められない場合があります。
顧客対応、社内資料、通常業務、急な依頼のすべてに期限があると、目の前の仕事から処理しがちです。
この質問を使うときは、「自分で決められないのは問題だ」と考えないようにしましょう。
チームの方針や上位の目標が共有されていなければ、適切な判断はできません。
「期限が近いもの」「影響が大きいもの」「ほかの人の作業を止めているもの」など、判断基準を一緒に整理します。
上司が優先順位を決める場合も、結論だけでなく理由を説明しましょう。
「この案件は顧客の業務を止めているため、社内資料より先に対応します。」
このように伝えれば、似た場面で本人が判断しやすくなります。
目標設定研究では、明確な目標やフィードバックなどが成果に関わる重要な条件として整理されています。
1on1では、目標を増やすより、今何を優先するかを明確にすることが役立ちます。
上司やチームに支援してほしいことはありますか
この質問は、本人が必要としている支援と、上司が提供している支援のずれを確認するために使えます。
上司は細かな助言が必要だと思っていても、本人は他部署との調整を求めているかもしれません。
反対に、自由に任せているつもりでも、本人は判断基準の説明を必要としている場合があります。
答えが抽象的なら、支援の種類を分けて聞きましょう。
「情報の共有、判断の相談、作業量の調整、学習機会のうち、どれが必要ですか。」
支援を約束する前に、上司ができることとできないことを明確にします。
「他部署との調整は私が行います。」
「増員はすぐには難しいため、今週の仕事を減らせるか確認します。」
実行できない約束をすると、次回から相談されなくなります。
上司による支援や関係の質は、従業員の健康や仕事への態度との関連が研究されています。
支援を聞いたら、誰が何をいつまでに行うかまで決めましょう。
部下の気持ちや本音を引き出す質問例
最近やりにくいと感じたことはありますか
「不満はありますか」と聞くと、上司への批判を求められているように感じることがあります。
「やりにくいと感じたこと」という表現なら、仕事の手順、情報共有、人間関係、道具、会議など、具体的な状況を話しやすくなります。
答えが出たら、「どの場面で感じましたか」「何が変わると進めやすくなりますか」と聞きましょう。
本人の感情だけでなく、改善できる条件を確認できます。
上司自身の行動が原因として挙げられた場合は、すぐに説明や反論をしないことが大切です。
まず、「そう感じた具体的な場面を教えてください」と確認します。
事実認識が違う場合も、本人がそう受け取った理由があります。
すべての要望を受け入れる必要はありません。
しかし、聞いた後に何も返答しないと、話しても意味がないと感じさせます。
実行すること、検討すること、変更できないことを分けて返しましょう。
仕事で負担になっていることは何ですか
仕事の負担は、件数や労働時間だけではありません。
判断責任の重さ、頻繁な割り込み、顧客からの厳しい対応、役割の曖昧さ、同僚への支援なども負担になります。
「忙しいですか」と聞くだけでは、「みんな忙しいので大丈夫です」と返されることがあります。
「時間を最も使っている仕事は何ですか。」
「気持ちの負担が大きい仕事はありますか。」
「減らすか、進め方を変えたい仕事はありますか。」
このように具体化しましょう。
負担を聞いたからといって、本人の希望どおりに仕事をなくせるとは限りません。
それでも、優先順位を変える、担当を分ける、相談先を決める、休息を確保するといった調整は可能です。
心身の不調が疑われる場合は、1on1だけで解決しようとしないことも重要です。
本人の同意や組織の手順に沿い、人事、産業保健、医療機関など適切な支援先につなぎましょう。
チーム内で相談しにくいと感じる場面はありますか
「チームに問題はありますか」と聞くと、範囲が広く、答えにくくなります。
相談しにくい場面に絞ると、会議、チャット、上司への報告、特定の業務などを思い出しやすくなります。
「どのような内容を相談しにくいですか。」
「誰かに相談したとき、どのような反応がありましたか。」
「どの時点なら話しやすいですか。」
このように状況を確認しましょう。
心理的安全性は、何を言っても許される状態ではありません。
質問、懸念、失敗を伝える際に、恥をかかされたり不利益を受けたりする不安が過度に強くない状態です。
Edmondsonの研究では、心理的安全性とチームの学習行動との関係が示されました。
相談しにくいという答えが出たら、本人に勇気を求めるだけでは不十分です。
相談を受ける側の反応、会議の進め方、報告基準、連絡手段などを見直しましょう。
私からの支援で増やしてほしいことや減らしてほしいことはありますか
上司本人への要望は、部下にとって特に答えにくい話題です。
「私の悪いところを教えてください」と聞くと、評価への不安から率直に答えられない場合があります。
支援の量に置き換えると、比較的答えやすくなります。
「進捗確認を増やした方がよいですか。」
「細かな助言は減らした方が進めやすいですか。」
「判断の背景をもう少し説明した方がよいですか。」
具体例を添えてもよいでしょう。
ただし、部下が答えた直後に「でも、それには理由があって」と反論すると、次回から意見が出ません。
まず受け止め、変更できるかを考えます。
実行できない要望には、業務上の理由を説明しましょう。
また、聞くだけでなく、次回に「前回の要望を受けて確認方法を変えましたが、どうでしたか」と振り返ります。
上司の行動が実際に変わることで、意見を伝える意味が生まれます。
最近うれしかったことや達成感を感じたことは何ですか
1on1が問題探しだけになると、部下は面談を注意される時間だと感じます。
うまくいったことや達成感を確認することで、本人が何に価値を感じているかを知ることができます。
「どの部分が特にうれしかったですか。」
「自分のどの行動が結果につながったと思いますか。」
「今後も続けたいことはありますか。」
このように聞けば、成功を再現する手がかりが得られます。
上司が高く評価している成果と、本人が達成感を持った出来事が異なることもあります。
数字の成果より、顧客から感謝されたことや、後輩を支援できたことに意味を感じる人もいます。
その違いは、今後の役割や成長機会を考える材料になります。
ただし、無理に前向きな答えを求めないようにしましょう。
思い当たることがない場合は、「最近、少しでも進めやすくなったことはありますか」と範囲を小さくします。
成長やキャリアについて考える質問例
今後伸ばしたい力は何ですか
「将来どうなりたいですか」という質問は範囲が広く、答えにくい場合があります。
まず、現在の仕事に近い能力から聞きましょう。
説明力、判断力、専門知識、調整力、文章作成、チーム運営など、本人が具体的に考えられる範囲にします。
答えが出たら、「なぜその力を伸ばしたいですか」「どの仕事で使いたいですか」と理由を確認します。
上司が必要だと思う能力と、本人が伸ばしたい能力が違う場合もあります。
そのときは、どちらか一方を否定するのではなく、現在の役割で必要な力と、本人の希望を分けて考えます。
「今の役割では顧客説明の力が必要です。」
「そのうえで、本人が希望する分析業務を経験できる機会も探しましょう。」
このように組み合わせます。
能力名だけで終わらせず、実際の行動へ変えることも大切です。
「説明力を伸ばす」なら、「月に一度、会議で五分間の報告を担当する」と具体化できます。
挑戦してみたい仕事はありますか
この質問は、本人の関心や成長意欲を知るために使えます。
ただし、答えた仕事を必ず任せられるとは限りません。
質問する前に、希望を聞く目的を伝えましょう。
「すぐに実現できるとは限りませんが、今後の仕事配分を考える参考にしたいです。」
この一言があれば、期待のずれを減らせます。
希望が出たら、仕事の名称だけでなく、何に魅力を感じているかを確認します。
人前で発表したいのか。
新しい分野を学びたいのか。
顧客と直接関わりたいのか。
責任ある判断を経験したいのか。
理由がわかれば、希望した仕事そのものを渡せなくても、似た経験を用意できる場合があります。
挑戦には、任せる仕事だけでなく、時間、助言者、必要な情報も必要です。
経験のない仕事を渡して放置することは、成長支援とは言えません。
自分の強みをどこで生かせていると思いますか
自分の強みを答えることに慣れていない人もいます。
その場合は、「周囲からよく頼まれることは何ですか」「比較的進めやすい仕事は何ですか」と聞き換えましょう。
本人の答えと、上司が観察した行動を組み合わせます。
「顧客の話を整理する力は、問い合わせ対応で生かせています。」
「資料の誤りを見つける力は、確認作業で役立っています。」
このように具体的な場面を伝えると、本人も強みを理解しやすくなります。
強みを確認する目的は、得意な仕事だけを続けさせることではありません。
新しい役割でどの能力を生かせるかを考えるためです。
また、強みが過剰に使われると負担になる場合もあります。
相談に乗るのが得意な人へ、すべての支援業務が集中していないか確認しましょう。
強みを評価することと、同じ人へ仕事を偏らせることは別です。
今の仕事から学べていることは何ですか
目の前の仕事と将来の成長がつながっているかを確認できる質問です。
本人が「何も学べていない」と答えた場合、すぐに意欲不足と判断してはいけません。
仕事が単調すぎる。
期待される能力が説明されていない。
同じ失敗を繰り返しても振り返る機会がない。
新しい仕事を任されない。
このような原因が考えられます。
「最近できるようになったことはありますか。」
「以前より判断しやすくなったことはありますか。」
「まだ経験できていないことは何ですか。」
このように分けて聞きます。
学びが見えない場合は、仕事を変える前に、振り返りの機会を作る方法もあります。
一つの案件が終わった後に、判断した内容、うまくいった方法、次に変えることを整理します。
経験するだけでは、必ずしも学びにはなりません。
経験を言葉にし、次の行動へつなげることで、成長を実感しやすくなります。
次の一歩として何から始めたいですか
キャリアの話が大きな理想だけで終わると、行動へつながりません。
最後に、本人が始められる小さな一歩を確認しましょう。
「興味のある仕事を担当している人に話を聞く。」
「必要な能力を一つ調べる。」
「次の会議で短い報告を担当する。」
「月内に研修候補を探す。」
この程度でも十分です。
上司が決めるのではなく、本人に選んでもらうことが大切です。
難しそうな場合は、複数の選択肢を示します。
目標設定では、具体的な行動、期限、進捗確認などが重要です。
「成長する」「頑張る」という表現だけでは、実行できたか判断できません。
「いつまでに何をするか」「上司は何を支援するか」まで決めましょう。
次回の1on1では、できたかどうかだけでなく、実行しやすかったか、方法が本人に合っていたかも確認します。
1on1を行動につなげる質問と注意点
今日の話から次に変えたいことは何ですか
1on1で多くの話題を扱っても、最後に何も決めなければ、日常へ戻った後に忘れられます。
終了前に、本人が最も変えたいことを一つ聞きましょう。
「話した内容の中で、最初に変えるなら何ですか。」
「今週から試せることはありますか。」
上司が重要だと考える課題と、本人が変えたい課題が違う場合もあります。
業務上の緊急性が低いなら、本人が選んだ行動から始める方法があります。
一方で、安全、法令、顧客への重大な影響がある課題は、上司が優先順位を明確にする必要があります。
変えることを多く決めすぎないようにしましょう。
三つも四つも約束すると、どれも中途半端になりやすくなります。
一つ実行し、次回に確認してから次の改善へ進む方が、変化を評価しやすくなります。
いつまでに何を試してみますか
「今後気をつけます」「少し考えます」では、実行したかどうかを確認できません。
期限と行動を具体的にします。
「金曜日までに、優先順位を一覧にする。」
「次の顧客対応で、回答前に確認項目を使う。」
「今月中に、希望する業務の担当者へ話を聞く。」
本人が無理なく実行できる大きさにしましょう。
行動が大きすぎる場合は、最初の準備へ分けます。
「資格を取る」ではなく、「来週までに試験日と必要な学習時間を調べる」とします。
予定どおりできなかった場合の扱いも決めておくとよいでしょう。
実行できなかったことを、そのまま本人の意欲不足と判断してはいけません。
時間が確保できなかったのか、行動が大きすぎたのか、優先順位が変わったのかを確認します。
期限は、本人を追い込むためではありません。
次に振り返る時点を明確にするためのものです。
上司が担当する支援と情報の扱いを明確にする
1on1では、部下だけでなく上司にも行動が発生します。
他部署と調整する。
仕事量を見直す。
必要な資料を共有する。
研修の機会を探す。
本人が相談しやすい時間を確保する。
上司の担当を具体的にし、期限も決めましょう。
「確認しておきます」ではなく、「水曜日までに担当部署へ確認し、結果を伝えます」とします。
また、会話の中で知った情報をどこまで共有するかも確認します。
「この内容は人事にも相談した方がよいと思いますが、共有してよいですか。」
「業務調整のため、チームには勤務時間が変わることだけ伝えます。」
このように扱いを明確にします。
ただし、安全、法令違反、ハラスメント、重大な健康上の危険など、上司だけで秘密にできない内容もあります。
最初から「何を話しても絶対に秘密にします」と約束せず、必要な対応がある場合は本人へ説明しましょう。
答えを急がせたり誘導したりしない
質問をした直後に答えが出ないことがあります。
将来の希望や上司への要望は、その場ですぐに整理できない場合もあります。
沈黙を失敗だと考えず、「今すぐ答えなくても構いません」「次回までに考えてもらっても大丈夫です」と伝えましょう。
二つの質問を同時にしないことも重要です。
「最近どうですか。仕事は順調ですか。何か困っていませんか」と続けると、どれに答えればよいかわかりません。
一つずつ聞き、答えを受けて次の質問を選びます。
また、「つらいですよね」「やっぱり辞めたいですか」と、感情や結論を先に決めないようにしましょう。
「どのように感じていますか」と本人の言葉を待ちます。
質問集を上から順番に読む必要もありません。
話の内容に合わせて深掘りし、重要な話題が出たら、予定していた質問を減らしましょう。
1on1は質問数をこなす場ではありません。
次回までに確認する内容を一緒に決める
最後に、次回何を確認するかを決めましょう。
本人が試す行動。
上司が行う支援。
変化を確認する項目。
次回までに保留する話題。
これらを簡潔にまとめます。
「次回は、新しい優先順位で仕事量が変わったか確認します。」
「私は研修日程を調べ、あなたは希望する内容を一つ選びます。」
このように双方の役割を明確にします。
必要であれば、本人が見られる場所に短い記録を残します。
ただし、個人的な悩みを詳細に書き残す必要はありません。
業務上必要な行動と支援を中心に記録しましょう。
次回の1on1では、前回の約束から始めます。
毎回新しい質問をするだけで、以前の話を確認しないと、「聞くだけで終わる」と思われます。
上司が約束した支援を実行できなかった場合は、理由を説明し、新しい期限を伝えてください。
対話の信頼は、質問の上手さより、話した内容が次の行動へ反映されたかどうかで育ちます。
まとめ
1on1で大切なのは、質問例を数多く覚えることではありません。
相手の状況や目的に合わせて質問を選び、答えを急がせずに聞くことです。
進捗を確認するときは、期限だけでなく、困っている点、優先順位、必要な支援まで確認しましょう。
本音や負担を聞くときは、「不満はありますか」と広く聞くより、やりにくかった場面や相談しにくい状況を具体的に尋ねた方が答えやすくなります。
上司自身への要望を聞く場合は、意見を否定せず、変えられることと変えられないことを返答してください。
キャリアの話では、大きな将来像だけを求めないようにしましょう。
伸ばしたい力、挑戦したい仕事、現在の強み、今の仕事から得ている学びなど、身近な内容から始めます。
会話の最後には、本人が試す行動と上司が行う支援を決めます。
期限と次回の確認内容を明確にし、話した情報を誰と共有するかも確認しましょう。
1on1は、部下の気持ちを聞き出すための面接ではありません。
本人と上司が仕事の状態を共有し、必要な支援や次の行動を一緒に考える時間です。
上手な質問よりも、話を途中で遮らないこと、約束した対応を実行すること、次回に振り返ることが信頼につながります。
- Supervisors’ Active-Empathetic Listening as an Important Antecedent of Work Engagement|International Journal of Environmental Research and Public Health
- Supervisors’ Attitudes and Skills for Active Listening with Regard to Working Conditions and Psychological Stress Reactions among Subordinate Workers|Journal of Occupational Health
- Coping with Organizational Layoffs: Managers’ Increased Active Listening Reduces Job Insecurity via Perceived Situational Control|Journal of Occupational Health Psychology
- Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams|Administrative Science Quarterly
- Leader-Member Exchange across Two Hierarchical Levels of Leadership: Concurrent Influences on Work Characteristics and Employee Psychological Health|Work & Stress

