相手との信頼関係を深めたいとき、何を話せばよいかばかり考えてしまうことがあります。
しかし、相手が安心して本音を話せるかどうかは、聞き手の姿勢にも大きく左右されます。
話を途中でさえぎらない。
すぐに答えや助言を出さない。
相手の言葉だけでなく、気持ちにも目を向ける。
理解が合っているかを確認する。
こうした小さな聞き方の積み重ねが、「この人になら話しても大丈夫」という安心感につながります。
この記事では、信頼される聞き方の考え方、避けたい対応、相手が話しやすくなる反応、本音につながる質問、会話後の行動までわかりやすく解説します。
信頼される聞き方に共通する考え方
話を聞くことと問題を解決することを分ける
誰かから悩みを聞くと、すぐに解決策を考えたくなることがあります。
「こうすればいいよ。」
「その人とは距離を置いた方がいい。」
「もっと早く相談すればよかったのに。」
助けたい気持ちから出る言葉でも、相手が求めていることと合っているとは限りません。
相手は解決策ではなく、まず出来事を整理するために話していることがあります。
気持ちを受け止めてほしいだけの場合もあります。
その段階で助言を始めると、「話を最後まで聞いてもらえなかった」と感じさせる可能性があります。
聞くときは、まず相手が何を求めているのかを確認しましょう。
「今日は話を聞く方がいいですか。」
「一緒に方法を考えた方がいいですか。」
この一言があれば、聞く時間と解決を考える時間を分けられます。
相手中心の面接法である動機づけ面接では、相手自身の考えや理由を引き出すために、開かれた質問、肯定、反射的傾聴、要約などが使われます。
聞き手が答えを急ぐのではなく、相手が自分の考えを整理できるように支えることが大切です。
相手を評価せず理解しようとする
相手が話している途中で、「それは正しい」「それは間違っている」と評価し始めると、理解する前に結論を出してしまいます。
たとえば、相手が仕事を辞めたいと話したときに、「今辞めるのは甘えだ」と判断すると、その人がなぜ苦しんでいるのかを聞けなくなります。
信頼される聞き手は、すぐに賛成するわけではありません。
反対意見を持っていても、まず相手の見方を理解しようとします。
「どのようなことが重なって、辞めたいと思ったんですか。」
「一番負担になっているのは何ですか。」
このように聞けば、判断に必要な背景が見えてきます。
共感的な聞き方は、相手の意味や感情を理解し、それを言葉で返す技術として研究されています。
理解することは、相手のすべての意見に同意することではありません。
「そう考える理由はわかりました。」
「私は別の見方もありますが、まずあなたの考えを理解したいです。」
このように、理解と同意を分けることができます。
評価を急がない姿勢が、相手の安心につながります。
自分が話すより相手に関心を向ける
会話中に、自分がどう見られているかばかり考えると、相手の話が耳に入りにくくなります。
気の利いた返事をしなければならない。
自分も似た経験を話さなければならない。
沈黙させてはいけない。
このようなことを考えていると、相手が何を伝えようとしているかを見失います。
信頼を作る聞き方では、自分の印象より、相手の言葉や反応へ意識を向けます。
どの話題で声が小さくなったか。
何度も繰り返している言葉は何か。
事実を話しているのか、気持ちをわかってほしいのか。
こうした点に注意を向けると、次に聞くべきことが見えてきます。
医療者と患者の信頼を調べた研究では、積極的に聞くこと、詳しく説明すること、気遣いを示すことなどが、信頼形成に重要だと患者側から評価されていました。
聞き上手になるために、特別な話術は必要ありません。
相手の発言を自分の話へのきっかけにせず、まずその人の話として受け取ることが基本です。
沈黙を急いで埋めようとしない
会話が止まると、気まずさを感じる人は少なくありません。
しかし、相手が黙ったからといって、話したくないとは限りません。
言葉を選んでいる。
気持ちを整理している。
話してよい範囲を考えている。
感情が落ち着くのを待っている。
このような可能性があります。
沈黙を怖がって質問を重ねると、相手は考える時間を失います。
話題を変えてしまえば、本当に話したかった内容を言えなくなることもあります。
少し待ち、穏やかな表情を保ちましょう。
必要なら、「ゆっくりで大丈夫です」と伝えます。
患者と医療者のコミュニケーション改善プログラムを作る研究では、間を取ることと積極的に聞くことが、患者から重要な要素として評価されました。
沈黙をすべて埋めるのではなく、相手が考えるための時間として扱うことが大切です。
ただし、長い沈黙が続き、相手が困っている様子なら、「今日はここまでにしますか」と選択肢を出してもよいでしょう。
一度の会話で本音を聞き出そうとしない
信頼関係は、一度の深い会話だけで完成するものではありません。
相手に本音を話してほしいと思うほど、質問を重ねたくなることがあります。
「本当はどう思っているの。」
「何か隠していない?」
「私には言えないの?」
このように迫られると、相手は安心するより、追い詰められたと感じます。
話す準備ができていないこともあります。
自分でも気持ちを言葉にできていない場合もあります。
信頼を作るには、話さない選択も尊重する必要があります。
「今は話したくなければ大丈夫です。」
「話したくなったら、いつでも聞きます。」
このように伝えた方が、後から話してもらえる可能性があります。
看護師と患者の関係を整理した研究では、信頼される関係の要素として、コミュニケーション、積極的傾聴、尊重、守秘などが挙げられています。
信頼は、秘密を聞き出した量では測れません。
話すかどうかを自分で選べると感じてもらうことが大切です。
信頼を失いやすい聞き方
相手の話を途中でさえぎる
相手が話し終わる前に口をはさむと、会話の主導権が聞き手へ移ります。
「それはわかる。」
「つまり、こういうことでしょう。」
「私も同じ経験がある。」
内容が合っていたとしても、相手はまだ話したいことがあるかもしれません。
途中でさえぎられると、「自分の話は最後まで聞く価値がないのか」と感じることがあります。
聞くときは、相手が一度言葉を止めても、すぐに話し始めないようにしましょう。
一呼吸待つと、相手が続きを話すことがあります。
どうしても確認が必要なら、「途中ですみません。一点だけ確認してもよいですか」と断ります。
積極的傾聴は、相手の言葉と感情を理解し、その理解を相手へ返す行為として定義されてきました。
理解を返すためには、まず相手が伝えたい内容を十分に聞く必要があります。
話の速さが遅い人や、考えながら話す人ほど、聞き手の待つ姿勢が重要です。
すぐに否定や反論をする
相手の意見に反対したくなる場面はあります。
しかし、最初の一言が「でも」「それは違う」だと、相手はその後の説明をやめることがあります。
たとえば、「最近仕事がつらい」と言われたときに、「でも、給料はいいでしょう」と返すと、つらさを打ち消されたように感じます。
事実として給料がよくても、仕事がつらいという感情は存在します。
まず、相手がそう感じた背景を聞きましょう。
「どのあたりが一番つらいですか。」
「最近特に負担が増えたことはありますか。」
その後で、必要なら別の見方を伝えます。
「大変だったことはわかりました。」
「そのうえで、私が心配している点も話してよいですか。」
反対意見を持つことと、相手の経験を否定することは別です。
共感的なコミュニケーションは、相手の立場を理解し、その理解を示す行為として扱われています。
理解を示してから意見を伝える方が、対立を避けやすくなります。
求められていない助言を始める
助言は、内容が正しくても、タイミングが合わなければ負担になります。
相手が「今日は本当に疲れた」と話しただけなのに、生活習慣や仕事術の話を始めると、気持ちを受け止めてもらえなかったと感じるかもしれません。
助言したくなったら、まず許可を取りましょう。
「私の考えを伝えてもよいですか。」
「方法を一緒に考えますか。それとも今日は聞くだけにしますか。」
相手が「聞くだけでいい」と答えたら、その選択を尊重します。
相手中心の動機づけ面接は、指示や説得だけで変化を迫るのではなく、本人の理由や迷いを引き出す方法です。
聞き手が正解を渡すより、相手が自分で考えられるようにすることが重視されています。
助言を求められた場合も、一つの案として伝えましょう。
「こうするべきです」ではなく、「一つの方法として、こういう選択肢もあります」と言えば、相手の決定権を守れます。
自分の経験に話題をすり替える
共感を示すために、自分の似た経験を話すことがあります。
「私も同じことがあったよ。」
この一言だけなら、相手を安心させる場合があります。
しかし、その後に自分の話が長く続くと、会話の中心が入れ替わります。
相手が失恋の話をしているのに、自分の過去の恋愛を詳しく話す。
相手が仕事の悩みを話しているのに、自分の苦労の方が大きかったと説明する。
これでは、相手は聞き役になってしまいます。
自分の経験を話すなら、短くして相手へ戻しましょう。
「私にも似た経験があります。」
「そのときはかなり苦しかったです。」
「あなたは今、どんなところが一番つらいですか。」
自己開示は関係づくりに役立つことがありますが、相手の話を奪わないバランスが必要です。
高い質の聞き方を扱った研究では、話し手に注意を向け、理解を示す反応が、話し手と聞き手双方の経験に影響することが検討されています。
自分の話は、相手の理解を助ける範囲にとどめましょう。
話を聞きながらスマートフォンを見る
会話中にスマートフォンを見ると、相手は自分の話が重要ではないと感じることがあります。
仕事の連絡を確認しているだけでも、相手には理由がわかりません。
ただし、スマートフォンが視界にあるだけで必ず関係の質が下がるという研究結果は一貫していません。
スマートフォンの存在が会話の関係性や創造性へ与える影響を再検証した研究では、当初報告された効果は再現しにくく、影響は少なくとも単純ではないと結論づけられています。
一方で、端末の存在が認知課題の成績を下げる可能性を示した実験もあります。
大切なのは、スマートフォン自体を悪者にすることではありません。
相手が話している最中に通知へ反応したり、画面を見続けたりすれば、注意が分かれて見えることです。
重要な会話では、端末を伏せるか、かばんへ入れましょう。
連絡を確認する必要があるなら、「急ぎの連絡だけ確認してもよいですか」と伝えます。
説明があるだけでも、相手の受け止め方は変わります。
相手が話しやすくなる聞き方
相手の言葉を短く受け止める
相手の言葉を短く返すと、話を聞いていることが伝わります。
「最近、仕事が忙しくて。」
「忙しい状態が続いているんですね。」
「会議でうまく話せなかったんです。」
「思うように話せなかったんですね。」
これは、単なるオウム返しではありません。
相手の話の中心をつかみ、続きを話せるように返す方法です。
反射的傾聴では、相手の言葉や意味を聞き取り、要約や言い換えによって理解を返します。
ただし、毎回同じ語尾で繰り返すと不自然になります。
重要な言葉だけ拾う。
少し言い換える。
感情を含めて返す。
このように変化をつけましょう。
「上司に認めてもらえなくて悔しかった」と言われたら、「努力を見てもらえなかったようで、悔しかったんですね」と返せます。
理解が違っていれば、相手が訂正してくれます。
「悔しいというより、悲しかった」と返されたら、その修正を受け入れましょう。
事実だけでなく感情にも反応する
相手の話には、出来事と感情が含まれています。
「上司から急に仕事を追加された」という出来事の裏には、困惑、怒り、不安、諦めなどがあるかもしれません。
事実だけに反応して、「仕事はいくつ追加されたんですか」と聞くと、情報は集まります。
しかし、相手が感情をわかってほしい場合には不十分です。
「急な変更で困ったんですね。」
「断りにくくて不安だったんですか。」
このように気持ちにも触れましょう。
ただし、感情を決めつけないことが大切です。
「絶対に怒っているでしょう」と断定せず、「怒りもありましたか」と確認します。
共感的傾聴は、相手の意味や感情を理解しようとし、その理解を言葉で伝える技術として扱われています。
感情を言葉にして返すことで、相手自身が気持ちを整理できる場合もあります。
答えやすい質問から少しずつ広げる
いきなり深い質問をされると、相手は警戒することがあります。
「本当は何に悩んでいるの。」
「家族関係に問題があるの。」
関係が浅い相手には答えにくい質問です。
まず、事実に近い答えやすい質問から始めましょう。
「最近忙しい日が続いていますか。」
「今週は特に負担が大きかったですか。」
相手が詳しく話し始めたら、少しずつ気持ちや希望へ広げます。
「その中で、一番つらかったのはどの場面ですか。」
「今は、どうなれば少し楽になりそうですか。」
動機づけ面接では、開かれた質問と反射的傾聴を組み合わせ、本人の考えや変化への言葉を引き出します。
質問の深さは、相手の答え方に合わせましょう。
短い返事なら、深追いしません。
自分から詳しく話してくれたら、続きを聞きます。
相手の話を自分の言葉で確認する
話を聞いているつもりでも、理解がずれていることがあります。
そのため、重要な部分は自分の言葉で確認しましょう。
「つまり、仕事量そのものより、急に予定を変えられることがつらいということですか。」
「辞めたいと決めたわけではなく、今のまま続けられるか迷っているんですね。」
この確認によって、相手は誤解を訂正できます。
「そうではなく、仕事量が一番つらいです」と言われたら、理解を修正します。
反射的傾聴や要約は、相手の意味を確かめながら会話を進めるために使われます。
確認するときは、自分の解釈を事実のように言わないことが大切です。
「あなたは上司を嫌っているんですね」と断定するのではなく、「上司との関係にも負担を感じていますか」と聞きます。
理解を確認する姿勢そのものが、「勝手に決めつけない人」という安心感につながります。
話したくない様子なら無理に聞かない
相手が目をそらす。
返事が短くなる。
話題を変える。
「大丈夫です」と繰り返す。
このような反応があれば、今は話したくない可能性があります。
心配だからと質問を続けると、相手は逃げ場を失います。
「話したくないなら大丈夫です。」
「必要になったら声をかけてください。」
このように、話さない選択を残しましょう。
信頼関係には、尊重と守秘が必要だと、対人支援関係を扱った研究でも整理されています。
ただし、自傷や他害、虐待、重大な健康問題など、安全に関わる可能性がある場合は別です。
その場合は、秘密を守ることより安全確保を優先し、専門機関や責任者へつなぐ必要があります。
日常の会話では、相手が自分のペースを選べるようにすることが信頼につながります。
本音を引き出す質問の使い方
「なぜ」より「何があったか」と聞く
「なぜ」という質問は、理由を知るために便利です。
しかし、言い方や場面によっては、責められているように聞こえます。
「なぜ報告しなかったの。」
「なぜそんな選択をしたの。」
相手は説明するより、自分を守ろうとするかもしれません。
同じ内容でも、出来事を聞く形にすると答えやすくなります。
「報告できなかったとき、何が起きていましたか。」
「その選択に至るまで、どのようなことがありましたか。」
「どの段階で迷いましたか。」
この聞き方なら、原因を一つに決めつけずに済みます。
相手中心の面接法では、開かれた質問を用いて、本人の視点や状況を探索します。
ただし、「なぜ」を絶対に使ってはいけないわけではありません。
柔らかい声で、「なぜそう思ったのか、聞いてもいいですか」と尋ねれば、自然な場合もあります。
重要なのは、尋問のようにならないことです。
確認質問と自由に話せる質問を使い分ける
質問には、答えを限定する確認質問と、自由に話せる質問があります。
「今日は眠れましたか。」
「会議には参加しましたか。」
このような質問は、事実を確認しやすい一方で、会話が短く終わりやすいです。
「最近、睡眠はどんな状態ですか。」
「会議ではどのようなことがありましたか。」
こちらは、相手が自分の言葉で話せます。
どちらが常によいわけではありません。
相手が緊張していたり、話を整理できていなかったりする場合は、確認質問の方が答えやすいことがあります。
ある程度話せる状態なら、自由に話せる質問で広げます。
「昨日は眠れましたか。」
「少しだけです。」
「眠れないとき、どんなことを考えていましたか。」
このように組み合わせましょう。
動機づけ面接では、開かれた質問が重要な技術として扱われていますが、相手との関係性や聞き手の技術の質によって、効果の現れ方が変わることも報告されています。
質問の形式より、相手が話しやすいかどうかを基準にします。
決めつけず複数の可能性を残して聞く
「怒っているんでしょう。」
「本当は辞めたいんでしょう。」
このような質問は、聞き手の予想を相手へ押しつけます。
相手は違うと感じても、訂正しにくいことがあります。
複数の可能性を残して聞きましょう。
「怒りがありますか。それとも不安の方が大きいですか。」
「辞めたい気持ちと、続けたい気持ちの両方がありますか。」
「疲れているように見えますが、別の理由もありますか。」
選択肢が当てはまらなければ、「どちらでもない」と言える余白も作ります。
反射的傾聴では、聞き手の理解を仮のものとして返し、相手に修正してもらうことが重要です。
相手の心を読み当てることが目的ではありません。
一緒に確認することが目的です。
「私にはこう見えましたが、合っていますか」と聞く姿勢が、決めつけを防ぎます。
今の気持ちと、これからどうしたいかを分けて聞く
相手の気持ちと希望は、同じとは限りません。
仕事がつらいと感じていても、すぐに辞めたいとは限りません。
家族に腹を立てていても、関係を切りたいわけではないかもしれません。
そのため、今の気持ちと今後の希望を分けて聞きましょう。
「今はどんな気持ちですか。」
「これから、どうなれば少し楽になりそうですか。」
「今すぐ決めたいですか。それとも少し考えたいですか。」
このように聞けば、感情だけから結論を決めつけずに済みます。
相手中心の面接では、本人の価値観や変化への理由を引き出し、本人が決定できるように支えることが重視されています。
聞き手が先に「こうした方がよい」と決めるのではなく、相手が何を望んでいるかを確認しましょう。
希望がまだわからない場合は、「今は決めなくても大丈夫です」と伝えることもできます。
質問を重ねすぎず相手が考える時間を作る
質問が続くと、会話が面接や尋問のようになります。
「いつからですか。」
「誰が言ったんですか。」
「なぜそうしたんですか。」
「次はどうするんですか。」
相手は答えるだけで疲れてしまいます。
一つ質問したら、答えを受け止めます。
短く言い換える。
感情に反応する。
少し待つ。
その後で、必要な質問をします。
質問、質問、質問ではなく、質問、傾聴、確認という流れを作りましょう。
動機づけ面接では、開かれた質問だけでなく、肯定、反射、要約を組み合わせます。
質問の数が多いほど本音が出るわけではありません。
相手が考え、言葉を選べる時間がある方が、深い話につながる場合があります。
聞いた後に信頼を深める行動
話してくれたことに感謝を伝える
相手が悩みや本音を話すには、勇気が必要なことがあります。
話し終わった後に、「話してくれてありがとう」と伝えましょう。
長い感想を言う必要はありません。
「話してくれてありがとうございます。」
「言いにくいことを伝えてくれて、うれしいです。」
「信頼して話してくれたことを大切にします。」
このような言葉で十分です。
感謝を伝えるときは、「やっと話してくれたね」と責める言い方にならないように注意します。
また、話してくれた内容を利用して、相手を動かそうとしてはいけません。
感謝は、本音を引き出した報酬ではありません。
相手が自分の経験を共有してくれたことへの敬意です。
高い質の聞き方は、話し手の肯定的な感情や、聞き手から理解されているという認識に関係することが示されています。
聞いた内容だけでなく、話してくれた行為そのものを大切にしましょう。
助言する前に意見を伝えてよいか確認する
相手の話を十分に聞いた後でも、助言を始める前には確認しましょう。
「一つ気になったことを話してもよいですか。」
「私の考えも聞きたいですか。」
「方法を一緒に考えますか。」
許可を求めることで、相手は聞く準備ができます。
今は助言が不要なら、断ることもできます。
助言するときは、相手の話を踏まえて伝えます。
「あなたは今すぐ辞めるより、まず負担を減らしたいと言っていましたね。」
「その希望に合う方法として、上司に業務量を相談する選択肢があります。」
このように、相手の希望と助言をつなげましょう。
動機づけ面接では、相手の自律性を尊重し、本人の理由や選択を中心にすることが重視されています。
意見を伝えた後も、「決めるのはあなたです」と選択権を残します。
秘密にすべき内容をむやみに広めない
信頼関係を作るうえで、守秘は重要です。
相手から聞いた悩みを、本人の許可なく家族や同僚へ話せば、信頼を失います。
「心配だったから。」
「相談に乗ってもらいたかったから。」
善意があっても、本人にとっては秘密を破られたことになります。
誰かへ相談する必要がある場合は、先に許可を取りましょう。
「私だけでは判断できないので、専門の担当者に相談してもよいですか。」
「名前を出さずに相談してもよいですか。」
ただし、命や安全に関わる問題、虐待、犯罪被害などでは、本人の希望だけで秘密を守れない場合があります。
そのときは、「安全のため、専門機関へ相談する必要があります」と説明します。
対人支援関係の研究では、信頼できる関係に必要な要素として、尊重や守秘が挙げられています。
秘密を守ることと、安全を守ることの両方を考えましょう。
約束した対応を忘れずに実行する
どれだけ丁寧に話を聞いても、その後の約束を守らなければ信頼は弱くなります。
「確認しておきます。」
「明日連絡します。」
「担当者に相談します。」
このように言ったなら、実行しましょう。
できない約束はしないことも大切です。
その場で安心させるために、「必ず解決します」と言っても、実現できなければ落胆させます。
「できる範囲を確認します。」
「金曜日までに状況を伝えます。」
このように、現実的な約束にしましょう。
医療者への信頼を調べた研究では、積極的傾聴に加えて、詳しい説明、気遣い、知識を示すことなどが信頼形成に関係していました。
信頼は、会話中の態度だけでなく、会話後の一貫した行動で作られます。
対応が遅れる場合も、黙ったままにせず、「予定より遅れています」と連絡しましょう。
後日さりげなく状況を確認する
大切な話を聞いた後は、後日さりげなく状況を確認しましょう。
「先日話してくれた件、その後どうですか。」
「今は少し落ち着きましたか。」
「また話したくなったら聞きます。」
この一言があると、相手は「その場だけでなく、覚えてくれていた」と感じます。
ただし、毎日確認したり、詳しい報告を求めたりすると負担になります。
相手の反応を見て、頻度を調整しましょう。
短く答えたら、それ以上聞かない。
話し始めたら、時間を取って聞く。
「今日は話さなくて大丈夫です」と選択肢を残す。
こうした配慮が必要です。
パートナー間の研究では、ストレスについて話す相手へ注意深く耳を傾けることが、関係満足度や協力的な対処と関連していました。
一度聞いて終わるのではなく、相手のペースで気にかけ続けることが、信頼を深めます。
まとめ
信頼関係を作る聞き方で大切なのは、相手から本音を聞き出すことではありません。
相手が自分のペースで話し、考え、選べる環境を作ることです。
まず、話を聞くことと問題を解決することを分けましょう。
相手を評価せず、すぐに答えを出さず、何を感じているのかを理解しようとします。
沈黙も、考えるための時間として扱います。
信頼を失いやすいのは、話を途中でさえぎる、すぐに否定する、求められていない助言をする、自分の話へすり替えるといった聞き方です。
スマートフォンを確認する必要がある場合も、黙って画面を見るのではなく、理由を伝えましょう。
相手が話しやすくなるためには、言葉を短く受け止め、感情にも反応し、自分の理解が合っているかを確認します。
質問は、答えやすい内容から始めます。
確認質問と自由に話せる質問を使い分け、「なぜ」と責めるより、「何があったか」と出来事を聞きましょう。
質問を重ねすぎず、相手が考える時間も作ります。
会話の後は、話してくれたことに感謝を伝えます。
助言する前には許可を取り、秘密を守り、約束した対応を実行しましょう。
後日、無理のない範囲で状況を確認することも大切です。
信頼は、うまい相づちを一度使っただけでは生まれません。
相手を尊重する聞き方と、その後の誠実な行動を積み重ねることで作られます。
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