会話のたびに自慢を重ねられたり、成果を小さく扱われたりすると、はっきり悪口を言われていなくても疲れてしまいます。
こうした言動は、一般にマウンティングと呼ばれます。
マウンティングする人の背景には、自分を上に見せたい気持ち、認められたい思い、競争意識、自信のなさなど、さまざまな可能性があります。
ただし、相手の内面を決めつけることはできません。
大切なのは、実際の言動を見て、自分が傷つかない距離と対処法を選ぶことです。
この記事では、マウンティングする人に見られやすい心理、代表的な言動、受け手がつらくなる理由、勝ち負けに巻き込まれない対応方法を解説します。
マウンティングする人に共通する心理
自分を相手より上に見せたい
マウンティングする人の言動には、自分の方が優れていると示そうとする特徴があります。
相手が仕事の成果を話したら、さらに大きな成果を重ねる。
相手が持ち物を褒められたら、より高価な物の話を始める。
相手が知らないことを見つけたら、必要以上に知識を披露する。
このような行動では、情報を共有することより、会話の中で優位な位置を取ることが目的になっています。
人は周囲と自分を比べながら、自分の立場や能力を確認することがあります。
社会的比較そのものは特別な行動ではありません。
ただし、比較することへの意識が強くなりすぎると、会話の内容よりも「自分が上か下か」が気になりやすくなります。
社会的比較に関する研究では、自分より優れていると感じる相手との比較が、自尊感情や主観的な幸福感と関連することが報告されています。
自分の立場を守りたい気持ちが強い人は、相手の成功をそのまま認めると、自分の価値が下がるように感じる場合があります。
そこで、「自分の方が上だ」と示せる話を加え、安心しようとします。
ただし、すべての自慢話がマウンティングとは限りません。
見分けるポイントは、相手の話を尊重しているか、それとも相手を下げることで自分を上げようとしているかです。
自信のなさを埋めようとすることがある
堂々と自慢する人を見ると、自信があるように見えるかもしれません。
しかし、優位性を何度も確認しなければ落ち着かない人の場合、内側には不安定な自己評価がある可能性もあります。
自分の価値を自分で確かめられないため、学歴、収入、肩書き、容姿、家族、交友関係などを使い、周囲から評価を得ようとするのです。
相手より上だと感じられれば、一時的には安心できます。
ところが、その安心は長く続きません。
別の人が褒められたり、自分より優れた人が現れたりすると、再び不安になります。
その結果、優位性を示す会話が繰り返されます。
社会的比較と自尊感情の関係を調べた研究では、自分より上だと感じる相手との比較が、自尊感情の低下と結びつく場合があることが示されています。
ただし、「マウンティングする人は全員、自信がない」と決めつけてはいけません。
単純に競争を好む人もいます。
周囲の会話の影響で、自慢することが習慣になっている人もいます。
本人に悪意がなく、相手を不快にさせていることに気づいていない場合もあります。
大切なのは、相手の内面を言い当てることではありません。
実際の言動によって、自分がどのような影響を受けているかを見ることです。
周囲から認められたい気持ちが強い
マウンティングの背景には、「すごいと思われたい」「価値のある人だと認めてほしい」という気持ちが隠れていることがあります。
人から認められたいと思うこと自体は、珍しいことではありません。
問題は、認められるために相手を低く扱うことです。
たとえば、相手が資格を取ったと話したときに、「その資格は簡単だよね」と言ってから、自分の持つ上位資格を紹介します。
自分の実績だけを話すより、相手の実績を小さくした方が、自分との差を大きく見せられるからです。
また、周囲からの反応が大きいほど、同じ行動を続けやすくなります。
驚く。
悔しがる。
反論する。
必要以上に褒める。
こうした反応が、本人にとって「優位に立てた証拠」になる場合があります。
自己評価を保つために、周囲からの称賛や承認を強く求める傾向は、自己愛に関する研究でも扱われています。
ただし、自己愛的な特徴を持つことと、自己愛性パーソナリティ障害と診断されることは同じではありません。
日常の会話だけで病名を判断することはできません。
相手の承認欲求を満たすために、こちらが毎回大きく反応する必要はありません。
短い相づちで流し、比較の会話に入らないことが有効です。
人間関係を上下で考えやすい
マウンティングする人の中には、人間関係を対等なつながりではなく、上下関係として考えやすい人がいます。
誰の年収が高いか。
どちらの会社が有名か。
どちらの家庭が恵まれているか。
誰の知識が多いか。
このような基準で相手との位置を確認し、自分が上なら安心し、下だと感じれば不安になるのです。
社会的支配志向に関する研究では、人や集団の間に上下関係や不平等があることを好む傾向が、支配や階層に関する態度と結びつくことが示されています。
ただし、この研究概念を一人の知人にそのまま当てはめることはできません。
日常的なマウンティングと、研究で測定される社会的支配志向は同じものではないからです。
それでも、人間関係を上下で捉えやすい人には、共通した会話の傾向があります。
相手の話を聞くより、どちらが上かを決めたがる。
協力より競争を優先する。
相手の成功を自分への脅威として感じる。
立場の弱い人には強く、影響力のある人には態度を変える。
このような人と対等な関係を作ろうとしても、会話が勝負に変わることがあります。
相手のルールに合わせて勝とうとするより、比較そのものから降りることが大切です。
相手より優位だと確認して安心したい
マウンティングする人は、相手の反応を使って自分の位置を確認することがあります。
相手が黙った。
悔しそうな顔をした。
言い返せなかった。
自分を褒めた。
こうした反応を見て、「自分の方が上だ」と感じ、安心するのです。
この場合、話題の内容は重要ではありません。
仕事で勝てなければ、学歴の話をする。
学歴で勝てなければ、結婚や子どもの話をする。
家庭の話で勝てなければ、持ち物や交友関係を持ち出す。
自分が優位に立てる基準へ、話を移していきます。
マウンティングに関する日本の研究では、地位や能力の誇示、魅力の誇示など、複数の種類に分類できる可能性が示されています。
このタイプの会話に正面から反論すると、別の基準を持ち出してくることがあります。
そのため、勝敗を決めようとしない方が効果的です。
「そうなんですね。」
「人によって違いますね。」
「私は今の方法で満足しています。」
このように、相手の優位性を認めることも否定することもせず、自分の基準に戻ります。
相手が欲しがっている勝ち負けの反応を与えなければ、会話を長引かせずに済みます。
マウンティングでよく見られる言動
会話を自慢話にすり替える
マウンティングでよく見られるのが、相手の話を自分の自慢話へすり替える行動です。
「最近、仕事で表彰されたんです。」
「へえ。でも、私は去年もっと大きな賞をもらったよ。」
「旅行で北海道へ行きました。」
「北海道なら何度も行っているよ。私は海外の方が好きだけど。」
このように、相手の話を受け止める前に、自分の方が上だと見せる話へ変えます。
似た経験を話すこと自体は悪くありません。
自然な会話でも、共通点として自分の経験を話すことがあります。
違いは、元の話をした人に会話を戻すかどうかです。
「私も行ったことがあります。どこが一番よかったですか」と返せば、相手の話を尊重しています。
一方で、自分の経験だけを長く話し、相手の成果や楽しみを小さく扱うなら、優位性を示す意図が感じられます。
マウンティング発話の研究では、露骨な自慢だけでなく、丁寧に見せながら相手を下げる間接的な表現も確認されています。
このような会話をされたら、自分の話を取り戻そうと張り合う必要はありません。
「そうなんですね」と短く返し、話題を変えるか、会話を終えましょう。
相手の成果にさらに上の話を重ねる
相手が何かを達成したとき、素直に認めず、さらに上の成果を重ねるのも典型的な言動です。
昇進したと言えば、もっと早く昇進した人の話をする。
資格を取ったと言えば、より難しい資格を持ち出す。
子どもの成績を話せば、さらに成績のよい子どもの話をする。
相手の成果を祝うより、比較によって価値を下げることが中心になっています。
このような言葉を受けると、せっかくの達成感が小さくなることがあります。
しかし、相手の比較は、成果そのものの価値を変えるものではありません。
自分より上の人がいることと、自分が努力して得た結果に価値がないことは別です。
社会的比較は、自尊感情や気分に影響を与えることがあります。
特に自分より優れた相手との比較は、状況によって落ち込みにつながる可能性があります。
比較を重ねられたら、事実に戻りましょう。
「私にとっては、今回達成できたことがうれしいです。」
「他の人との比較ではなく、自分の目標として取り組みました。」
このように、自分の基準を伝えることで、勝負から降りられます。
知識を使って相手の無知を強調する
知識を教えることと、知識で相手を下げることは違います。
「その言葉も知らないの?」
「普通は知っていると思うけど。」
「そんな基本的なことから説明しないといけないの?」
このように、情報を伝える前に相手の無知を強調する言い方は、相手を恥ずかしい立場に置きます。
本当に助けたいのであれば、相手を傷つける前置きは必要ありません。
「これはこういう意味です。」
「最初はわかりにくいですよね。」
「必要なら手順を説明します。」
このように伝えれば十分です。
知識を持っていることそのものは、マウンティングではありません。
相手の理解を助けるために使っているのか、相手を低く見せるために使っているのかが違いです。
特に人前で無知を強調されると、恥ずかしさや屈辱を感じやすくなります。
職場で人格や能力を否定する侮辱的な言動が続く場合は、単なる会話上の不快感ではなく、ハラスメントとして検討すべき場合があります。
厚生労働省は、人格を否定する言動、侮辱、ひどい暴言などを、職場における精神的な攻撃の例として示しています。
年収や学歴、肩書きを比べたがる
年収、学歴、勤め先、役職などは、上下をつけやすい数字や肩書きです。
そのため、優位性を確認したい人が話題に使うことがあります。
「どこの大学を出たの?」
「年収はいくら?」
「その会社では役職は何?」
質問自体が必ず悪いわけではありません。
しかし、答えを聞いた後に見下す、勝ち誇る、周囲へ広めるような場合は注意が必要です。
人の価値は、単一の数字や肩書きだけで決まりません。
仕事内容、経験、得意分野、生活で大切にしていることは人それぞれです。
それでも相手が一つの基準で順位をつけたがるなら、その比較に参加しない選択ができます。
「年収の話はあまりしないようにしています。」
「学歴より、今何をしているかを大切にしています。」
「その話題には答えません。」
答えたくない質問には、答える義務はありません。
笑ってごまかしながら無理に答えると、次も同じ質問をされることがあります。
短く、はっきり境界線を示しましょう。
褒めるように見せて相手を下げる
マウンティングは、露骨な悪口だけではありません。
「意外と仕事ができるんだね。」
「その年齢にしては若く見えるね。」
「安い服なのに、上手に着ているね。」
表面上は褒めていますが、前提に否定的な評価が含まれています。
このような言い方をされると、喜んでよいのか、傷ついてよいのかわからず、違和感が残ります。
マウンティング発話を分析した研究でも、称賛の形を取りながら否定的な表現を加えるなど、間接的に相手を下げる言い方が扱われています。
遠回しな言葉は、反論しにくいのが特徴です。
「褒めただけなのに」と言い逃れされることもあります。
すべての言葉に反応する必要はありません。
一度だけなら流し、繰り返される場合は自分の受け止め方を伝えましょう。
「褒めてもらったのかもしれませんが、その言い方は少し引っかかります。」
「年齢と比べる言い方は、あまりうれしくありません。」
相手の意図を決めつけず、言葉によって自分がどう感じたかを伝えると、境界線を示しやすくなります。
マウンティングされるとつらい理由
自分を否定されたように感じる
マウンティングを受けると、自分の成果、能力、生活、価値観を否定されたように感じます。
相手は軽い冗談のつもりかもしれません。
しかし、会話のたびに「自分の方が上だ」と示されれば、受け手は自分を小さく扱われていると感じます。
大学生を対象にした日本の研究では、マウンティング場面が受け手にストレス反応を生じさせる可能性が報告されています。
特につらいのは、はっきりした悪口ではないことです。
傷ついたと伝えても、「考えすぎ」「冗談だよ」と返されることがあります。
その結果、自分の感じ方まで疑ってしまいます。
しかし、不快に感じた事実まで否定する必要はありません。
相手に悪意があったかどうかと、自分が傷ついたかどうかは別の問題です。
「相手に悪気はなかったかもしれない。」
「それでも私は、この言い方をされるとつらい。」
この二つは両立します。
自分の反応を大げさだと責めず、どの言葉が負担だったのかを整理しましょう。
会話のたびに競争させられて疲れる
普通の会話をしたいだけなのに、何でも勝ち負けへ変えられると疲れます。
仕事の話をすれば成果を比べられる。
休日の話をすれば旅行先を比べられる。
家族の話をすれば子どもや配偶者を比べられる。
何を話しても順位をつけられるため、安心して自分のことを話せなくなります。
社会的比較は、場合によって努力の目標になることもあります。
しかし、繰り返し比較にさらされると、自尊感情や気分に悪い影響が出る可能性があります。
比較の会話に疲れたら、話す情報を減らしても構いません。
個人的な成果や悩みは、信頼できる人にだけ話す。
相手には天気や仕事上の事実など、浅い話題にとどめる。
二人きりになる時間を減らす。
これは逃げではありません。
自分の心を守るための距離調整です。
人間関係は、すべて同じ深さにする必要はありません。
安心して話せない相手とは、必要な範囲だけ関わる選択もできます。
言い返せない自分を責めてしまう
マウンティングされた後で、「なぜ言い返せなかったのだろう」と悔しくなることがあります。
その場では驚いて言葉が出なかった。
周囲の空気を悪くしたくなかった。
相手が上司や先輩で反論できなかった。
冗談なのか判断できなかった。
言い返せない理由はいくつもあります。
反応できなかったからといって、弱いわけではありません。
不意に失礼な言葉を向けられれば、すぐに適切な返事ができないのは自然です。
後から気づいた場合は、次に備えて短い言葉を用意しましょう。
「比較する話は苦手です。」
「その言い方は少し不快です。」
「私はそうは考えていません。」
「この話はここまでにします。」
長い反論を作る必要はありません。
相手を言い負かすより、会話を止める言葉の方が役立ちます。
その場で何も言えなかったとしても、後から距離を置いたり、信頼できる人へ相談したりできます。
対処は、その瞬間だけに限られません。
周囲の前で立場を下げられたように感じる
人前で知識不足や失敗を強調されると、周囲からの評価まで下がったように感じます。
二人きりで言われるより、恥ずかしさや屈辱が強くなることがあります。
「この人、そんなことも知らないんですよ。」
「また同じミスをしたんです。」
「まだその程度の仕事しかできないんだよね。」
このような言葉は、本人への指摘というより、周囲へ向けた順位づけとして使われることがあります。
職場で人格や能力を否定する言葉を人前で繰り返す行為は、状況によってはパワーハラスメントの精神的な攻撃に該当する可能性があります。
厚生労働省は、他の労働者の前での威圧的な叱責や、人格を否定する言動などを例として挙げています。
一度の不快な発言だけで、直ちに法的なハラスメントと決まるわけではありません。
立場、頻度、内容、業務上の必要性などを含めて判断されます。
それでも繰り返されているなら、日時、場所、発言内容、同席者を記録しましょう。
自分だけで抱えず、上司、人事、相談窓口などへ共有することが大切です。
相手との距離感がわからなくなる
普段は親しそうなのに、突然見下すような言葉を使う人もいます。
褒めてくれる日もあれば、競争を仕掛けてくる日もあります。
そのため、「本当は仲がよいのか」「嫌われているのか」がわからなくなります。
関係が近いほど、距離を置くべきか迷います。
昔からの友人。
職場の同僚。
親族。
同じ保護者仲間。
簡単には離れられない相手もいます。
この場合、相手の気持ちを完全に理解しようとするより、自分が安心して関われる範囲を決めましょう。
会う時間を短くする。
二人きりではなく複数人で会う。
比較されやすい話題を避ける。
連絡への返信を急がない。
必要な内容だけ話す。
関係を続けるか絶縁するかの二択にする必要はありません。
距離には多くの段階があります。
相手の態度に合わせて近づいたり離れたりするのではなく、自分が落ち着いていられる距離を基準にしましょう。
マウンティングする人への上手な対処法
勝ち負けの会話に乗らない
マウンティングされたとき、最も避けたいのは、相手より上であることを証明しようとすることです。
「私だってもっとすごい経験がある。」
「あなたより私の方が評価されている。」
「その程度で自慢しないで。」
このように返すと、会話はさらに競争になります。
勝っても関係がよくなるとは限りません。
相手は別の話題を持ち出し、勝負を続けるかもしれません。
効果的なのは、比較を成立させない返し方です。
「人それぞれですね。」
「比べる必要はないと思います。」
「私は自分の目標として取り組んでいます。」
「そういう考え方もあるんですね。」
社会的比較そのものから距離を置くことで、自分の気分を守りやすくなります。
比較が自尊感情や幸福感に影響し得ることは、複数の研究で報告されています。
相手を納得させる必要はありません。
会話を勝負にしない姿勢を、一貫して示すことが大切です。
短い相づちで反応を小さくする
相手が驚きや悔しさを引き出そうとしている場合、大きく反応すると会話が長引きます。
「すごいですね!」
「そんな人と知り合いなんですか?」
「私なんて全然ダメです。」
このような反応は、相手の優位性を強く確認させます。
必要以上に褒めず、否定もせず、短く返しましょう。
「そうなんですね。」
「なるほど。」
「そういう経験があるんですね。」
その後、別の話題へ移ります。
「ところで、今日の予定ですが。」
「話は変わりますが、確認したいことがあります。」
反応を小さくすることは、無視や冷たさとは違います。
最低限の礼儀を保ちながら、競争の会話へ入らない方法です。
ただし、職場で必要な情報まで聞き流してはいけません。
業務に関係する部分は確認し、自慢や比較に当たる部分には反応を増やさないようにします。
毎回同じように対応すると、相手も大きな反応を得にくいと気づくことがあります。
比較ではなく事実に話を戻す
職場や共同作業でマウンティングが起きた場合は、比較ではなく事実へ戻しましょう。
「私はあなたより経験が長いから。」
「前の職場ではもっと高度な仕事をしていた。」
このように言われても、現在の課題を解決する材料になるとは限りません。
「経験の違いではなく、今回の作業手順について確認したいです。」
「誰が上かではなく、締切までに何をするかを決めましょう。」
「今必要なのは、売上の数字と今後の対応です。」
事実へ戻すと、個人的な競争から離れられます。
相手の人格や意図を責める必要もありません。
会話の目的を示し、その目的に必要な情報だけ扱います。
友人や家族との会話でも同じです。
「どちらが大変かを比べたいわけではなく、今日は私の話を聞いてほしいです。」
「他の家庭との比較ではなく、私たちの予定を決めたいです。」
会話の目的を言葉にすると、話題を戻しやすくなります。
不快な言い方には境界線を示す
短い相づちで流しても続く場合は、境界線を示す必要があります。
境界線とは、相手を支配する命令ではありません。
自分がどのような言い方を受け入れないかを伝え、その場合に自分がどう行動するかを示すことです。
「学歴を比べる話はしたくありません。」
「その言い方をされると不快です。」
「私の家族を評価する話題はやめてください。」
「同じ言い方が続くなら、この会話は終わりにします。」
相手の性格を攻撃せず、具体的な言葉や行動を指摘しましょう。
「あなたは性格が悪い」ではなく、「人前で能力を否定する言い方はやめてください」と伝えます。
一度伝えても直らないことがあります。
その場合は、言葉だけでなく行動も変えます。
会話を終える。
席を離れる。
連絡の頻度を減らす。
第三者を入れる。
境界線は、相手が理解してくれることだけに頼ってはいけません。
自分が実行できる対応とセットにすることが大切です。
関わる頻度や距離を調整する
何度伝えてもマウンティングが続くなら、距離を調整しましょう。
すべての人と深い関係を続ける必要はありません。
会う回数を減らす。
二人きりになる状況を避ける。
個人的な情報を話さない。
SNSの公開範囲を変える。
仕事では連絡内容を業務に限定する。
こうした方法があります。
相手が親族や同僚で、完全には離れられない場合もあります。
その場合は、関係を切るのではなく、接触する時間や話題を限定します。
「必要な仕事の話だけにする。」
「集まりには一時間だけ参加する。」
「比較されやすい収入や家族の話をしない。」
距離を置くと、罪悪感を持つ人もいます。
しかし、自分を傷つける会話から離れることは、相手への攻撃ではありません。
自分の心を守るための調整です。
不快な関係を我慢し続けることだけが、大人の対応ではありません。
マウンティングされにくくなる考え方
相手の評価と自分の価値を分ける
マウンティングされると、「自分は本当に大したことがないのかもしれない」と感じることがあります。
しかし、相手の言葉は客観的な評価とは限りません。
相手自身の価値観、不安、競争意識によって発せられている可能性があります。
一人の人から低く扱われたからといって、自分の価値が下がるわけではありません。
年収が高い人が、人間として上というわけではありません。
有名な会社に勤めている人が、すべての能力で優れているわけでもありません。
誰かの子どもの成績がよくても、自分の家族の価値とは関係ありません。
社会的比較は、自尊感情や満足感に影響を与える場合があります。
だからこそ、何を基準に自分を評価するかを決めておくことが大切です。
昨日よりできるようになったこと。
自分が大切にしている態度。
努力を続けたこと。
周囲に誠実に接したこと。
相手の順位表ではなく、自分の基準で自分を見る習慣を作りましょう。
すべてを言い返そうとしない
失礼な言葉には、正しく言い返さなければ負けだと感じることがあります。
しかし、反論しないことは、相手の言葉を認めることではありません。
会話する価値がないと判断し、力を使わない選択でもあります。
言い返すほど、さらに攻撃される相手もいます。
細かな言葉尻をとられる。
別の話題へ移って比較される。
大勢の前で言い争いになる。
このような場合、反論より会話を終える方が自分を守れます。
「その話には答えません。」
「考え方が違うようですね。」
「この話題は終わりにします。」
短く伝えて離れましょう。
後から悔しさが残ったら、信頼できる人へ話す、記録へ残す、次の返し方を考えるなど、別の方法で整理できます。
その場で相手を言い負かすことだけが解決ではありません。
自分の時間や心の余裕を、誰に使うか選ぶことも大切です。
比較ではなく自分の基準を持つ
相手の基準に反応していると、終わりのない競争に巻き込まれます。
収入が上がれば、次は役職を比べられる。
役職で勝てば、家庭や持ち物を比べられる。
一つ勝っても、別の基準が出てきます。
そこから抜けるには、自分が何を大切にするかを決める必要があります。
収入の高さより、生活とのバランスを大切にする。
有名な会社より、やりたい仕事を選ぶ。
高価な持ち物より、長く使える物を選ぶ。
周囲の評価より、自分の成長を重視する。
自分の基準があれば、相手の比較に毎回答える必要がなくなります。
「私は今の働き方が合っています。」
「私は金額より使いやすさを大切にしています。」
「他の人との比較では決めていません。」
このように伝えられます。
自分の基準を持つとは、他人の意見を一切聞かないことではありません。
参考になる意見は受け取り、順位づけだけを受け入れないことです。
信頼できる人に状況を相談する
マウンティングが続くと、自分の受け止め方が正しいのかわからなくなることがあります。
「自分が気にしすぎなのではないか。」
「本当に嫌味だったのだろうか。」
「自分にも問題があるのではないか。」
一人で考え続けるより、信頼できる人へ相談しましょう。
相談するときは、「あの人はマウンティングする人だ」と評価だけを伝えるより、具体的な言葉や状況を説明します。
「みんなの前で、私の学歴を低く評価する発言が三回ありました。」
「成果を報告するたびに、さらに上の成果を重ねてきます。」
「やめてほしいと伝えましたが、冗談だと言われました。」
具体的に話すと、第三者も状況を判断しやすくなります。
職場の場合は、上司、人事、労働組合、社内相談窓口などが候補になります。
人格を否定する言動や侮辱が繰り返される場合は、ハラスメントに該当する可能性もあるため、早めの相談が重要です。
相談することは告げ口ではありません。
自分だけでは見えにくくなった状況を、整理するための行動です。
悪質な場合は記録を残して対応する
相手の言動が繰り返され、仕事や心身に影響している場合は記録を残しましょう。
記録する内容は、次のようなものです。
いつ起きたか。
どこで起きたか。
誰がいたか。
何を言われたか。
どのような対応をしたか。
仕事や体調にどのような影響があったか。
できるだけ事実と感想を分けて書きます。
「午後三時の会議で、『こんなことも知らない人に任せられない』と言われた。」
「同席者は三人いた。」
「その後、会議で発言しにくくなった。」
このように記録すれば、相談するときに説明しやすくなります。
メールやチャットの文章も、削除せず保存しましょう。
職場のパワーハラスメントは、優越的な関係を背景にした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境を害するという要素を踏まえて判断されます。
すべての嫌味や自慢が、法的なハラスメントになるわけではありません。
しかし、人格否定、侮辱、見せしめ、継続的な攻撃があるなら、一人で解決しようとせず、組織の相談窓口や専門機関を利用してください。
まとめ
マウンティングとは、言葉や態度を使って、自分が相手より優位であると示そうとする行為です。
ただし、正式な精神疾患の診断名ではありません。
言動だけを見て、相手の性格や病気を断定しないようにしましょう。
背景には、自分を上に見せたい気持ち、自信のなさ、認められたい気持ち、競争意識、人間関係を上下で捉える癖など、複数の可能性があります。
よく見られる言動には、相手の話を自慢へすり替える、成果にさらに上の成果を重ねる、知識を使って無知を強調する、年収や学歴を比較する、褒める形で相手を下げるなどがあります。
こうした言動を受けると、自分を否定されたように感じたり、常に競争させられて疲れたりします。
人前で立場を下げられたように感じることもあるでしょう。
対処するときは、相手より上であることを証明しようとしないことが大切です。
短い相づちで反応を小さくし、比較ではなく事実へ話を戻します。
繰り返される場合は、「その言い方は不快です」「比較する話はしたくありません」と境界線を示しましょう。
改善しなければ、会う頻度、話す内容、連絡方法を調整します。
相手の評価と自分の価値は別です。
すべてを言い返そうとせず、自分が大切にする基準へ戻りましょう。
悪質な言動が続く場合は、日時、場所、発言内容、同席者を記録し、信頼できる人や職場の相談窓口へ相談してください。
- 大学生のマウンティング行為が受け手に与える影響|CiNii Research
- マウンティングエピソードの収集とその分類:隠蔽された格付け争いと女性の傷つき|CiNii Research
- マウンティングの特徴について:ポライトネスの原理から|CiNii Research
- The Mediating Roles of Upward Social Comparison and Self-Esteem and the Moderating Role of Social Comparison Orientation in the Association Between Social Networking Site Usage and Subjective Well-Being|Frontiers in Psychology
- Intervening on Social Comparisons on Social Media|JMIR Mental Health
- Narcissistic Personality Disorder: Progress in Understanding and Treatment|Focus
- Social Dominance Orientation: Revisiting the Structure and Function of a Variable Predicting Social and Political Attitudes|Personality and Social Psychology Bulletin
- 職場におけるハラスメント対策パンフレット|厚生労働省
- 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました|厚生労働省

